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伝えたい エーザイのこと

知創部長メッセージ

知創部長 高山 千弘

知創部長 高山 千弘

はじめに

患者様の喜怒哀楽に
共感する

日々の業務を通じてhhcを実現する

おわりに

はじめに

 私たちにとって“チャレンジをもたらす活きた道標”としてのhhc理念をご説明させていただきたいと思います。hhcとは、「患者様とそのご家族、生活者の皆様の喜怒哀楽を考え、そのベネフィット向上を第一義とし、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足する」ことです。通常、顕在化された患者様の要望を満たしただけであれば、「患者様満足」を果たすことはできるでしょう。しかし、我々は、潜在化された目に見えない、場合によって患者様ご自身もきづいていらっしゃらない要望を叶えれば、「患者様歓喜」を果たすことができるのではないかと考えます。そのためには、直接患者様の傍らに立ってその喜怒哀楽に共感し、それをもって日常業務を通してhhc理念を実現していかなければなりません。

 「患者様歓喜」に向かって、我々社員の躍動力を結集させ、患者様に希望を創造していくための重要な要諦は、以下の2点です。

  • 患者様の喜怒哀楽に共感し、社内外の方々を巻き込んで共同化を行うこと。
  • 社員一人ひとりが日々の業務活動を通じてhhcの実現を図っていくこと。

患者様の喜怒哀楽に共感する

「ママ、僕は いつになったらケーキが食べられるの?」
幼い彼は涙をこらえ、質問という形で、悲痛な叫びを母親に浴びせた。
 表皮水疱症。日常生活でのささいな刺激によって大小の水ぶくれやただれが多発する病気である。なかでも彼は重症。口の中、のど、食道などの粘膜にも水ぶくれやただれが生じ、ものが飲み込みにくいなどの機能障害を起こしているのだ。固形物が口の中、のど、食道を通るたびに、表面は無常にも剥がれ落ちる。表皮のない全身は毎日水疱を伴う激しい炎症によりただれる。
 感染、そして皮膚がんの連続。母が毎晩水疱をつぶし、ステロイドを全身に塗る。だが彼は、一度たりとも遺伝や両親のせいにしない。一度たりとも・・・だ。
 あらゆる拒絶の中で、彼は成長し、現在は地方の国立大学を卒業し社会福祉の道に着く。弱い立場の人たちの気持ちがわかるから、病気の辛さを誰よりも知っているから、彼は強い意志で他者を助けようとしている。

 出生前診断で身体的遺伝子欠損をロングフル・バースとして世に出させない議論が多数です。自己欲のあふれるこの社会にあって、身体的な損傷はあるが、彼らのような人たちがいるからこそ、他者の心を受け入れ希望をつくることができるのではないでしょうか。しかし、受け入れられるという確信のないところでは、彼らは他者に言葉を預けません。わざわざ苦しみを二倍に増やしたくはないから・・・。

 患者様は聴こうとしてくれる人の姿勢を敏感に感じ取ります。彼らが口を開こうとするとき、それは聴こうとする側の人間が真剣に対峙しているときだけです。我々は経験しなければなりません。何を?それは彼らの喜怒哀楽であり、その弱い立場です。患者様とともに同じ立ち位置で同じ視線で、その共時性を経験する。それが我々に求められていること、hhc理念なのです。
 米国ボストン研究所の研究員は、「ロード・ツー・リカバリー(Road to Recovery)」プログラムを実施しています。がんの患者様は運転ができなくなり、一人では通院もできなくなります。その送り迎えの運転をする、まさにライフ・セービング・トランスポーテーションを通して、車中で患者様との喜怒哀楽に共感するのです。その暗黙知を研究員の仲間で共同化し卓越した研究活動へとつなげるのです。

 全世界のエーザイ社員一人ひとりの使命、役割は何でしょう。それは患者様の喜怒哀楽に共感することです。共感するためには特別な努力が必要です。患者様の傍らに行って、感性を発揮してその暗黙知を共体験することでしか、患者様の喜怒哀楽に共感などできないのです。そのために必要なものが、相手への思いやりの心・倫理観を持った「hhcマインド」と「現場知」です。この2つを心に秘めたとき、はじめてhhc活動がスタートするのです。

エーザイは「人材の育成」として、患者様との共同化を学ぶために、認知症、ダウン症、がん患者様との現場体験研修、各疾患患者会へ参加できるような環境づくりに注力しています。2004年12月からは、国内の全社員を対象に「ナレッジリーダー研修」を実施し、認知症の患者様や高齢者の方々と直接共同化を図り、体験を通して患者様の喜怒哀楽を共感しました。また、認知症施設での夜間勤務を含めた数日間の介護研修、小児がん医療施設での子供たちとの研修では、その明るさに隠れている残酷な事実に「傷ついて、はじめて気づきになる」ことなどを体験します。


日々の業務を通じてhhcを実現する

 hhc活動のもう一つの意義は、日々の業務を通じてhhcを実現していくことです。多くの患者様に希望を創りだすために何とかしたいという思いで、研究、生産、営業など日々の業務を通じて行動することが重要です。ともに弱い立場に立って心を開いて獲得した患者様の喜怒哀楽、そこから獲得した暗黙知を、今度は強い自覚をもって必死に実現していかねばなりません。

 例えば、営業でも生産でも研究開発でも、仕事の中でいくつかの候補から何を選ぶかは、いちばん患者様の希望と満足につながり、日常業務を通してhhcを実現できるという価値軸によります。アルツハイマー型治療剤アリセプトは小さな錠剤ですが、認知症の患者様にとっては服用に30分もかかるケースがあります。その想いをベースに幾多の試練の末、口腔内崩壊錠の開発につなげました。しかし、製造コストがよりかかったのです。それにもかかわらず、エーザイは錠剤への全面切り替えを行ないました。エーザイの企業目的は、hhc理念に基づく活動を通して果たす患者様歓喜です。その結果として、正当な売り上げ、利益があります。この目的と結果の順序が大切なのです。

 冬の厳しい寒さの残る雨上がりの午後、下町の住宅街の一角に小さな一軒家がある。
 そこには長年、認知症による周辺症状で苦しむ妻と、妻を心底から支える夫の高齢夫婦が住む。長年の多剤薬物服用により全身の震えが止まらない。食事も一人で食べられない。服も着られない。そんな妻を仕事場から頻繁に帰宅し、世話を続ける作業服姿の夫。近所からは厄介者として扱われ、区議会議員からは「ここに住まれたら困る」の冷血な要求。患者本意で有名なはずの近所の病院からは「こんな人が入院されたら入院患者が減る」。

 そんな在宅認知症の家々を回り、はじめて分かった現実。
 エーザイは患者様とその生活者の喜怒哀楽を反映した「予防、疾病管理、最新治療」の地域プランを実行することで、患者様の夢と希望をつなげ、患者様の将来を支え、向かい合い、共に歩いて行くことができるのです。hhcマインドを持ったエーザイ社員なら、患者様に希望をもたらすことができます。

 リウマチの生物製剤。患者様に大きな希望をもたらすものとして期待されている。しかし、一方で半数以上の患者様は服薬を中断せざるを得ないと、日本リウマチ友の会の会長は語る。働けない中での経済的負担は大きい。いま、ドラッグストアで痛み止めを購入されている女性がリウマチかもしれない。働ける今、もし、早期に診断されれば、この薬剤で完治するかもしれない。

 若年性リウマチの子供から、「生物製剤ができてよくなった。でも、病院で点滴を受けるためにみんなと遊べない。経口の薬はないの。」という切ない想いを直接共感した研究者の仕事は単なる研究ではなく、その子供のために何とかしたいという情動にもとづく活動です。エーザイは患者様とその生活者の喜怒哀楽を反映した「予防、疾病管理、最新治療」の地域社会におけるプランを実行することで、患者様の夢と希望をつなげ、患者様の将来を支え、向かい合い、共に歩いて行くことができます。hhcマインドを持ったエーザイ社員なら、患者様に希望をもたらすことができるのです。

アルツハイマー型治療剤アリセプトは、現在グローバルスタンダードとして多くの患者様が服用されていますが、エーザイは単に薬剤や関連情報を提供するだけではなく、フォーラムなどの疾患啓発活動、認知症検診活動、医師への診断技術向上のための勉強会、MRIによる早期診断プログラムの開発、地域ごとに医療、福祉、介護、行政を巻き込んだネットワークの構築など、「認知症になっても安心して暮らせるまち」づくりを行なっております。そのベースになるのがhhc活動で、現在、全世界では約500のhhcプロジェクトが進行しています。大切なのは現場での経験により患者様の抱えている暗黙知を知る、そしてhhcプロジェクトという知識創造活動により患者様満足を実現するということ。hhc活動の意義はそこにあります。


おわりに

 患者様の喜怒哀楽に共感することからはじまるhhc活動。これは、
「モノ(=新薬という物質)」を、
「コト(=患者様と我々との相互の関係性)」に、かえていくことです。

 患者様と我々をつなぐ想いは、希望といたわりの気持ち「hhcマインド」です。このマインドをもって、日常業務を通してhhcを実現していくこと、そして「生きたい」「生きていきたい」と願うすべてのいのちを懸命に照らす希望をすべてのエーザイ社員がクリエイトしていくことが、今の我々の使命です。

 ともに、患者様のため、社会のために、希望を創り出していきませんか。皆様のご理解とご参画をご期待しております。

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